資格試験合格者インタビュー

「歯から全身を、また全身から歯を、統合医療に基づいた咬み合わせの調整」をモットーに治療をしています。

プロフィール

田中 利尚先生【歯科医師】
ケテル齒科醫院院長ケテル齒科醫院HP

日本歯科大学生命歯学部卒業。整体師の資格も持つ。銀座での勤務を経て、秋田市にケテル歯科医院を開業され19年間診療されてきた。2014年に現在の西麻布にケテル齒科醫院として移転開業され、全国でも珍しく自由診療のみで診療されている。「咬み合わせと全身の調和」を目指し、歯科と整体を組み合わせた統合医療を行われている。

杏林アカデミーを受講したきっかけを教えてください!

様々な医療の場面で対症療法が行われていますが、本当の意味で、病気の予防や根本療法は食事を正すことだと以前から感じていました。
そのためか「食事について学びたい」と、自然と思うようになりました。
しかし、一口に「食事指導」といっても、考え方が様々で・・・。
「なにかいいセミナーはないか」と、食事指導関係のセミナーを受講された先生方に色々聞いて回っていた中で、杏林アカデミーを紹介いただきました。
詳細を聞いたところ、「杏林アカデミーは本物だ!」と思い、受講に至りました。

-先生は全国でも珍しく歯科と整体を組み合わせた診療を自由診療で行っていると伺いました!

そうなんです。
歯科治療にはどのような治療においても咬み合わせの治療が必要になります。そこで、20年くらい前“咬み合わせの大家”と呼ばれるアメリカ・セントピータースバーグのDr.ドーソンのところに短期留学し、咬み合わせを学びました。 しかし、学んだ咬み合わせの理論をもとに治療にあたっても、それだけではどうしても治らない、良い咬み合わせが実現できない症例が出てきたんです。どんなに咬み合わせを良くしようとしても、身体が歪んでいたらできない・・・西洋医学の限界を感じました。そんなとき、「いっそのこと歯から下の身体の歪みを解放したら良いのでは!?」と思い、東洋医学である整体を学び、整体師の資格を取得しました。
整体の勉強の中では姿勢や筋肉の知識はもちろんですが、食事療法として乳製品、肉、卵といった動物性食品は身体に良くないということも学びました。それは宇宙の秩序でもある「無双原理」とも同調した教えだったんです。そのとき、食べ物の入り口である口を診る歯科医は食医でもあるということを改めて思いました。
このことから、歯科・整体・食事の3つを組み合わせた統合医療を行うに至りました。

-整体がよりよい歯科治療につなげているということですね。

その通りです。実際、歯科治療と整体を組み合わせることで、歯が壊れる原因が分かるようになってきました。
例えば、咬み合わせることにより、歯に大きなストレスがかかってしまうと、その力によって虫歯や歯周病が起こることもあります。 そうならないようにするためには、その力を軽減させなければならないのですが、その時に歯を調整するか否か、という選択になるんですね。ただ、歯は一度調整すると元に戻らないため、なるべくなら触らないようにしたい・・・。葛藤の連続でした。
こういうとき、整体治療が役に立ったんです。
身体は一つに繋がっています。身体の歪みや咬み合わせによるストレスなど、虫歯や歯周病の本当の原因は見えないところにあるんです。

-身体の歪みも虫歯や歯周病の原因なのは驚きです!

体の“歪み”は食事のバランスの偏り、生活習慣の偏り、心の偏りから来ると考えています。「心の偏りが体の歪みに?」と思われるかもしれませんが、心と身体は繋がっており、呼吸や血圧などの自律神経系すべてにも関係します。
つまり、心の変化が呼吸の変化につながり、姿勢や行動の変化、そして虫歯や歯周病も含めた病気につながっていく・・・というような具合です。
心や感情はすぐに呼吸に影響を与えてしまいます。例えば、心配事があるとそればかり考えてしまい、自然と呼吸が浅くなるということがあります。特に、悩みが多い人や鬱を患っている人は下を向くことが多く、下向きになることで呼吸が更に浅くなり、ますます酸素不足が起こります。私たち人間は呼吸ができなくなると死に至ることからも、呼吸が浅くなることで酸素不足になると細胞も働きにくくなる、というわけです。反対に、上を向き胸が開いて深い呼吸ができるようになった状態でスキップをすると、その行動が脳の状態を変えるため、悩みを考えられなくなるのも事実です。
そのため、患者さんの身体の歪みを生んでいる感情の状態や、そういう感情にさせている原因も診ていかなければ、と考えています。感情の方向は日常の姿勢や言葉遣いがつくっていると言われています。だからこそ、バランスの取れた身体や咬み合わせ、そして、安泰な心を保つことが大切なんです。病気はこういった心と身体の偏りから生まれるものですからね。

-“病は気から”というのはこういうことから始まっているんですね・・・
そして、整体だけでなく、歯医者さんで食事指導というのも珍しいですね!

確かにそうですね。でも、「健康の基本は「食」の見直し」と思っています。「食」の中には、何を食べるかということだけでなく、食事中の姿勢や咀嚼、断食も含めた食事の回数といった「食べ方」も含まれます。 そんなふうに思うようになったきっかけは、幼少時の体験です。実は、幼少時に喘息を患っていたのですが、そのとき、お腹の中にモノが入っていない方が楽な感覚があったんです。今は昔のような辛い症状はありませんが、“身体が食べ物を欲していないときは無理に食べる必要はない”ということを体験できたのは、今思うと大きかったですね。 ただ、診療中に患者さんに食事指導をするとき、もっと科学的に説明できるようになりたいと思うようになってきました。自分自身の体験で得られたことは話せても、間違った情報や偏った情報を流してはいけませんからね。

-実際に杏林アカデミーを受講されてから、先生の中でどのような変化がありましたか?

一番大きな変化は、患者さんの栄養状態を気にするようになった、ということでしょうか。
患者さんが、日々、どのような食事をされているのか、和食中心なのか洋食中心なのか、1日に何食食べるのか、毎日の食事の中にお肉などの動物性食品はどのくらい入っているのか、好きな食品や嫌いな食品など、食生活の細かい部分について質問するようにしていますね。
食生活は、家族環境や人間関係などの精神的ストレスで変わってしまうものです。そのため、患者さんのお口の中以外の“裏の情報”を引き出すまでには、やはり時間を費やします。また、不用意な一言で嫌な思いをさせてしまわないように、一言ひとことに注意しながら、配慮を忘れないようにお話ししています。
中でも、食事の改善が必要な場合は、安易に“□□はダメですよ”“〇〇にしてください”というような言い方は患者さんに嫌な思いを与えてしまうことがあるため、特に注意しています。なぜなら、手に大きなケガをして、歯ブラシもできないような状態なのに、その状況を知らずに“歯を磨きなさい”と言ってしまうようなものだからです。患者さんの今の生活状況や気持ちの具合を察しながら、健康へのお手伝いをしていきたいと思います。
受講前までは「乳製品や肉を食べない方がいい」、「玄米を中心とした菜食にすべきだ」という考え方は自分の経験から得たのみの曖昧な認識だったのが、杏林アカデミーを受講したことで“やっぱり良かったんだ!”と確信を持って患者さんに指導できるようになりました。そのおかげで、患者さんも理解しやすくなったようです。

-患者さんの心に寄り添った診療ですね。他にはどのような変化がありましたか?

患者さんとの会話も含めた診療や施術をより心がけるようになった、というのも1つの変化でしょうか。 食事の改善を皮切りに会話を続けていると、人間関係やストレスになっている原因の解決策について、笑いながら話すことも多くなってきます。
来院されたときは暗い気持ちであったとしても、お帰りになられるときには元気で明るくなっていてほしいですからね。

--先生の患者さんへの温かい思いがとてもよく伝わります!
そのほか、先生の診療でこだわっているところを教えてください!

パーソナライズドメディシン(個別化医療)です。
同じ症状であっても、その症状になった原因までも同じとは限らないため、それぞれの患者さんに合わせた最適な治療を行っています。治療法は、西洋医学と東洋医学の融合から最先端のAIによる代替治療まで様々です。ときには日本では調べることができない、食品の遅延型アレルギーの検査や、歯髄細胞バンク、腸内細菌検査などを各社と提携し行っています。
もちろん、歯科治療や整体治療だけではなく、「医食同源」という考えを基に、食事方面のアプローチもしています。全身の60兆個の細胞が最善の活動ができるような環境を作るためには必要なことです。特にマグネシウムは、現在の日本の食卓事情を考えると、食事だけではなくサプリメントから補うことも必要です。そのため、必要ならばサプリメントも販売し、体が癒える環境づくりのお手伝いをしています。
日本の医療は医科と歯科の分離や細分化により、情報共有だけでなく、同じ方向を向いた治療や全体を見た治療が難しく、トータルバランスにかけてしまうんです。だからこそ、細胞環境デザイン学で細胞単位から勉強したことで、歯を1人の人間の一部分として診るのではなく、体全体から診ることができるようになり、より一人ひとりに応じた治療を行うことができるようになりました。
先ほども出ましたが、咬み合わせ、体調や姿勢、心の状態はそれぞれ影響を与え合っています。だからこそ、患者さんとゆっくりお話しすることにより、患者さん一人ひとりの全身の調和を考えた、「歯から全身を、また全身から歯を、統合医療に基づいた咬み合わせの調整」をモットーに治療をしています。

―ところで、先生の経歴や医院のコラムの中には「トライアスロン」や「ダイビング」が出てきますが、先生ご自身の健康法をお聞かせください!

           ▲インドの路上歯科医の様子

どんなことでも自分で経験してみる、ということでしょうか。 というのも、「健康」って、栄養や睡眠、運動、人間関係といった全てを含んだ心のバランスだと思うんです。だから、安泰した良いバランスを保つためには、まず何事も経験!というのが健康への第一歩になると思っています。 これまで多くの経験をしてきましたが、ただ“経験して終わり”ではなく、それぞれの経験から得て感じたことを、仕事を含めた色々な場面で活かすようにしています。

肉体的には、特に運動はなるべくするように心がけています。 トライアスロンは「毎年絶対出る!!」と決めているので、1年を通して練習できるように診療後に近くのプールに行って泳いだり、走りに行ったりしています。もちろん、トライアスロンのような過度な運動は細胞にとっては多少負担になりますが、バランスをみながらやっています。 また、最近はちょっとご無沙汰していますが、断食をしながら砂浜の中に身体を埋めて毒を出す砂療法に参加していたことがあります。砂療法に行けなくても、不調を感じたら半断食や断食を行うようにはしていますよ。でも、こうやって色々な方法を試していると、身体が軽くなり、感覚が繊細になるといった、自らの身体の変化を感じることができます。

精神的な健康面にも心がけていることがあります。 「今を生きる」と言うとかっこよすぎですが、たまに大型バイクに乗り、首都高速道路を命がけで走っています。命がけなので、一瞬一瞬が大切です。アドレナリンが思いっきり出るので、運転後は運動後よりも汗びっしょりになることもあります(笑)
あとは、どんなことでも何かを教わるときには、なるべくその道に精通している人から直接指導を受けるようにしています。最初に出てきた咬み合わせもそうやって学びました。そのような機会を得ることは難しいのですが、トライアスロンは“アイアンマン・トライアスロンの神様”と呼ばれるデイブ・スコット氏の合宿に参加させていただく機会があり、泳ぎ方やバイクの姿勢、走り方はもちろんのこと、心の在り方まで直接教わることができました。
また、インドのサイババのところに伺い、自分を見つめ直すだけでなく、運営されているホスピタルに世界中から集まるボランティアのドクターの様子や、街中の路上で歯科治療を行う路上歯科医の治療を拝見したこともありました。全ての出会いは良いご縁をいただいたおかげと感謝しています。

▲先生には、2017年に臨床検討会で、
細胞環境デザイン学の実践を発表していただきました。

そして、これは肉体的・精神的どちらにもなるのですが、山田先生にお会いできたことはとても良かったと思っています。栄養学に精通している先生から直接学べた、ということだけでなく「一つひとつの細胞が良い状態であれば、当然健康に繋がる」ということが分かったのが大きかったです。
もちろん、実践もしていますよ。例えば、マグネシウムとタウリンが良いということが分かると、早速トライアスロンで使うバイクのドリンクボトルに入れ、いつもと何が違うかとレース中に体験してみるということをやってみました。
トライアスロンのような肉体的にも精神的にも「きついな」「苦しいな」という経験を積むことは、「心と身体の連動」を繰り返し体験することだと思っています。この連動はとても大事で、身体の不調を心が、または、心の不調を身体がサインを出すということであり、身体全体の健康管理に繋がるものだと考えています。
つまりこの体験を繰り返すことは、心と身体が連動した時のパターンを知ることになるということです。その結果、例えば身体が不調を感じた時に心の面からその原因を解消するといった、2つの連動のリセットや再起動、コントロールをいつでも自分ですることができるようになれば、健康を維持する近道に繋がるのではないかと考えています。

-たくさんお聞かせいただきありがとうございました!
最後に、先生の今後のビジョンをお聞かせください!

ビジョンというと大袈裟かもしれませんが、まずは、今後も細胞環境デザイン学で学んだことを自ら実践していくこと、そして、当医院にお越しいただいた患者さんに「本当の栄養学」を伝えていくこと、ですかね。そのためには、やらなければならないことがたくさんあると思っています。

その内の1つに、今の歯科事情を改善する、というのがあります。 歯科治療は、歯を削ったり、前歯を入れるというような「目に見える」治療よりも、咬み合わせや全身のバランスを整えるといった「目に見えない」治療の方が重要です。本当は、今の医療の制度や歯科の教育を含め、本来重要である「目に見えない」ものにアプローチする力をもっと多くの歯科医師に知ってほしいのですが、実際は「目に見える」ものだけを追求してきてしまったことで、「目に見えない」部分の治療に目を向けないことが本当に多くて・・・。結果として、ますます狂いが生じて病気を作ってしまう、ということがあるんです。こういった事情を少しずつでも改善したいのです。
昔、講習会で「歯科は総合病院の院長になるべき存在である」と仰った先生がいらっしゃいました。その当時はその意味がよくわからなかったのですが、歯から全身を診るようになった今はようやくその意味がわかってきました。

口は生命の源です。だからこそ、全ての病気の最初の治療は歯であることを、もっと多くの歯科医に伝えていかなければいけないと思うんです。 4年前、秋田から東京に出ようと思ったのは、東日本大震災がきっかけでした。あのときは、突然の災害に見舞われ、考える暇もなく命を奪われた人がたくさんいました。それなのに、震災前と同じようにのほほんと生きていて良いのか?と思ったんです。私には命があるわけで、「なにを躊躇しているのか」と心の声がいつも叫んでいました。そのときに決心した“本当の歯科治療をしよう”という気持ちやパワーをいつまでも持ち続けていきたいです。

あとは、身近にある大切なものをもっと大切にしていくことですね。
今の時代って、便利さを追求するあまり、これまで大切にしてきたものを失っていると思うんです。特に子ども達の遊び方が良い例で、都会なんかは子ども達がのびのびと遊びまわる場所がどんどん少なくなってきて、反対にゲームやスマートフォンなどの電化製品に囲まれた環境になってます。そんな環境でまともな人間になるわけがないんです!
日本人が昔から大切にしてきた生活を取り戻そう!と声を上げていかなければと思っています。

-貴重なお話をありがとうございました!
何事においても真理を追究すること

様々なことに挑戦していく中で真理を追究していくと、どんな物事でも根っこの部分はこの大宇宙と同調して生きているということに気づかされます。 また、私は「生に感謝し、この大宇宙に愛を捧げること」を人生のミッションとしていますので、自分だけでなく私の周りにいる人にも幸せになって欲しいですし、人以外の生物、鉱物、植物その他すべてのものが幸せであってほしいと思っています。そのためのお手伝いをしていくことも、人生におけるこだわりですね。

田中 利尚先生が勤務されている、ケテル齒科醫院はこちら