何も足さない、何も引かないそんな生き方が理想です。

プロフィール

北西 剛先生【耳鼻科医】
きたにし耳鼻咽喉科院長きたにし耳鼻咽喉科院

平成4年に滋賀医科大学を卒業後、滋賀県内の病院および大学病院助手として勤務したのち、平成17年5月、守口市で開業。専門の耳鼻咽喉科の疾患全般において西洋医学だけでなく、全国的にも耳鼻科では珍しい栄養療法、ホメオパシー、交流磁気治療、アーユルヴェーダ、ヒーリング、ヨガ、波動など代替・統合医療なども治療に取り入れ、ホリスティックな診察を行う。患者様の話をしっかり聞くことを重視し、患者様自身と一緒になって治療法を探っていく“shared decision making”の考えを大切にしている。

-早速ですが、杏林アカデミーを受講したいと思ったきっかけを教えてください。

開業後、様々な代替医療を学び、診療に活かしてきました。その中で、病気の治療としてだけでなく、生命の元となる“食”についても深く学びたいと思い、食や栄養に関するセミナー、講演会、講座などをたくさん受講しました。生化学的な知識やサプリメントの使用についての知識は増えていきましたが、結局は処方するものが“薬”から“サプリメント”に変わっただけ…そんなわだかまりが残っていました。

そんなときに、山田豊文先生のセミナーを聞く機会がありました。先生のお話は決してヒトを臓器別に分ける視点ではなく、あくまでも健康のベースは“細胞”。健康になるためには“細胞”が置かれた環境を調えたり、“細胞”が喜ぶものを提供することが大切だという考えをお持ちで、単なる知識の詰め込みではないとても熱い講義内容でした。すぐに「もっと詳しくお話をお聞きしたい!」と思いました。

さらに、先生が多くのアスリートを指導されていて、指導を受けた選手たちが結果を残されてきたことも、阪神タイガースファンの私としては、ぜひとも杏林アカデミーで山田先生の講座を受講したいと思ったきっかけになりました。

-先生は阪神タイガースのファンでいらっしゃるのですね!先生のブログ『きた日誌』ではマテオ選手との2ショットも載せていらっしゃいました!

そうなんです!去年も阪神タイガースのキャンプに行きましたが、今年(2017年)も週末の土日で、弾丸ツアーで沖縄に行く予定です。機会があれば、今期からチーム栄養士になられた方と、お話したいなと思っています。

-『阪神タイガースネット検定』も合格されているとのこと…。先生の阪神タイガースへの愛がうかがえます。本題に戻りまして…杏林アカデミーの講義の中で、特に印象に残ったことを伺ってもよろしいでしょうか。

“細胞環境デザイン学”の講義全体を通して印象に残ったことは、山田先生の講義が単なる“食事論”“栄養論”ではなかったことでした。私も他の認定医の先生方同様、色々な栄養療法の講座の受講経験があります。一般的な栄養療法の講座・セミナーでは、詳細な生化学的知識、分析の説明はあるものの、ヒトの身体というものを“全体”として見ていないように感じていました。車でいうと、タイヤ、エンジンオイル、ガソリン…など、個々の部品については詳しく解説するものの、『その車がいかに快適に、スムーズに走るか?』という視点がないのです。

しかし、山田先生の講義は食や栄養の各論はもちろんのこと、地球や生命の誕生にまで遡っていて、動物やヒトの本質をとらえていました。その上で、音・光・水など、あらゆる面から全人的に健康とは何かを考えている-。そう思える講義内容でした。プログラムのひとつである早朝ウォーキングや音楽体感など体で感じることができ、一度受けると、また何度も聞きたくなる…。くせになる熱い講義でした。

-先生が栄養療法に興味を持たれたきっかけを教えていただけますか?

十数年前、医局の教授が変わられたことをきっかけに、勤務していた病院を退職する決意をしました。そのときは、当時まだ広くは知られていなかった統合医療を学ぶために、関東の統合医療専門クリニックに勤務する予定でした。しかし諸事情があって、現在の地で耳鼻科開業のご縁をいただくことになりました。そこで耳鼻科通常診療の傍ら、研究会・学会などに参加して、代替・統合医療を学んでいくことにしました。色々と勉強していくと、やはりどの分野においても食と栄養の話を抜きに、健康や病気のことは語れないなと感じるようになりました。特に対症療法が中心の耳鼻科においても、食養生や栄養療法が様々な疾患の治療や予防に重要だと実感するようになっていき、治療に取り入れるようになったのです。

-先生の医院では、栄養療法だけでなく、アーユルヴェーダやヨーガ、波動なども取り入れられているのですね!耳鼻科としてはとてもめずらしいように思います。

そうですね。講演などの際に少し紹介させていただく話ですが、私と統合医療との出会いは3つのきっかけがあったと思っています。

1つ目は、大学病院勤務医時代に知人が潰瘍性大腸炎を患っていました。ステロイド漬けの治療で副作用も強く…他にいい治療方法はないのか?と思い、色々と治療方法を検索し始めたことでした。

2つ目は、大学病院専門外来への疑問が芽生えたことです。以前、大学病院で耳鼻科専門外来を担当していましたが、その実態はほとんど薬を処方して、次回の予約を決めるだけの外来でした。最後の砦になるはずの大学病院の専門外来がこれでいいのか?と疑問を持ったことが大きかったと思います。

3つ目は、緩和ケア医との出会いです。十数年前、赴任先の病院で、当時全国に先駆けて緩和ケア病棟が設置されました。多くの頭頚部癌末期の患者さんを担当しましたが、手術・化学療法を行い、最後に治療法がなくなった時点で、緩和ケア病棟へと“送り込む”といったことが多くありました。自分がやっていることに疑問と虚しさを覚えていたところ、緩和ケア医の先生とお話の中で、ホメオパシーをはじめ、代替・統合医療という考えや世界があることを知りました。そこで、先ほどもちらっと話にあがりましたが、耳鼻科医をやめて統合医療の医師として、関東のクリニックでお世話になろうと決めていましたが、現在は耳鼻科開業医をやりながら、統合医療を学ぶ…という形になったのです。

▲杏林アカデミーでマグネシウム鼻うがいの臨床報告を
していただきました。
-そこで杏林アカデミーに興味を持っていただけたのですね!日々の診察の中で、杏林アカデミーの学びを応用し、改善されたエピソードなどを教えていただけますか?

受診される患者様と、杏林アカデミーでの知識や教えをもとに食に関してお話をしていくと、これまであまり興味を持っておられなかった方が、熱心に質問をされるようになっています。まさか耳鼻科に来て食の話を聞くとは思っておられなかったでしょうが、患者様のできる範囲で食生活の改善を試みられ、長い間患っていた不調が改善した方も多くいます。

具体例としては、職場のランチメニューでオメガ6脂肪酸の多い油ものを控え、意識してオメガ3脂肪酸を摂取した、トランス脂肪酸を多く含むコーヒーフレッシュなどを控えた…。などですが、どの耳鼻科でも治療が難しかった慢性副鼻腔炎や花粉症が“劇的に”よくなったと、喜んで報告してくれました。

他にもマグネシウムを含む溶液での鼻うがいで、慢性上咽頭炎・のどの異物感・後鼻漏が楽になったケースも多く経験しました。

また、慢性の外耳炎で、他の病院で様々な抗生物質やステロイド剤を使っても治らなかった方が、当院に来られました。マグネシウムやケイ素を点耳液として用いて治療すると、これも、驚くほど改善して、耳漏がピタッと止まったケースもありました。
いずれの場合も、決して炎症や細菌に抗う(あらがう)のではなく、皮膚や粘膜の状況を改善する…まさに“細胞環境”を改善することで劇的に症状がおさまることを、患者さんだけでなく私自身があらためて思い知らされました。
日々の診察の中で、症状が治らない方の特徴は人任せ、人に責任を転嫁する傾向があります。「病気は医師や薬が治すもの、治らないのは〇〇のせい」と思っている方の多くは症状が改善しませんね。あくまでも病気や症状は、誰かが治してくれるものではないと気づいた人から治っていきます。

-病気や不調の原因は自分の中にある-。なかなか患者の立場では気づきにくいかもしれませんね。

一方で、逆に~できていない自分、~をやらない自分を責めるタイプの方も多いです。患者様とお話していて、この自分を責めるタイプの方には、医師が「しっかりやれ!」といった指導をすると、自分を責めてしまいがちなので、自分を愛してもらうようにお話します。

間食してしまう自分、~を食べてしまう自分、~できない自分…。またそれも“自分”なので、決して“~できる”自分だけを好きにならず、“~できない”自分も好きになってくださいと。私もそちらのタイプなので、もっと自分を信じて、自分を愛するように、と言い聞かせています。なかなか難しいですが、食も、心の持ち方もすべてにおいて、昔CMのキャッチコピーにも使われていた、“何も足さない、何も引かない”そんな生き方が理想です。

-素敵なお考えですね。先生の医院の特徴・他の医院とは違う点を教えてください。

自院のHPにもあるように、「しっかりとお話を聞く」「わかりやすい説明をする」「幅広い治療選択肢の提案」を病院のコンセプトにしています。特に最近思っているのは、「もう年だから」「検査では異常はない」「気にしすぎている」「これ以上治療することはない」と言われた患者さんに対して、お一人ずつしっかり話をして、治療や対処法をみつけていくお手伝いをしたいということです。実際に当院には耳鼻科だけでなく、精神科や心療内科に行ったけれど薬を変えるばかりで話を聞いてもらえないと、訴えて来院される方もたくさんいらっしゃいます。

極端な言い方ですが、誰が診ても何をやっても治るケースというのはあると思います。逆にどうしても治らないケースでは、どこのコンビニに行っても同じ商品を売っているのと同じで、どこの病院に行っても同じ薬を出すだけ…の診療になっています。それでは患者様は困り、疲れ果てています。コンビニのような病院がいくら増えても、患者さんの悩みは一向に解決しません。それでは自身の存在価値はありませんし、どうやっても治らない方をなんとかしてあげたい、という思いで診察している点は他の医院には負けないつもりです。それが、いろんな治療法を取り入れて、幅広い選択肢を提案することにつながっています。

▲先生の著書「意外な病気、治せる病気」
幅広い治療方法を提案してくれる先生は本当に頼もしいです。先生が実践されている健康法を教えてください。

自身はなかなか実践できていないことも多いですが、自著『意外な病気、治せる病気』の中でも紹介した、操体法でいわれる「息」「食」「動」「想」を意識するようにしています。山田先生をはじめ、いろんな素晴らしい先生方とご縁をいただき、「息」「食」「動」「想」のご指導を受けています。

同じような教えはあるかと思いますが、自分が自分にできること・自分で変えられることは、“息=呼吸”、“食=食養生”、“動=運動、姿勢”“想=心の持ち方”です。これをいかにととのえるか?しかも“整える”ではなく“調える”ですね。

【息】について、私はかつて小児喘息を患っていました。現在ではあまり症状はでませんが、息ができない苦しさを嫌というほど味わいました。また、色々なことに対する不安感が強いタイプなので、のどや体を守る、動物の本能でしょうか、前かがみの防御姿勢にとても安心感を覚えます。また呼吸が浅くなりやすいので、しっかり吐いてから吸うことを意識しています。禅の“調身 調息 調心”という教え通り、身を整えるとおのずから呼吸が調い、心が調うと思います。ZEN呼吸法のご指導をいただいたことがある椎名由紀先生には、生きるは“息る”ことだと教わりました。

【食】については、山田先生の教えをもとに食材などを選んでいますが、やはりいつも考えていることは“少食”ですね。年間2000万トンもの食料を廃棄する日本にあって、食べられる幸せとともに、ファスティングができる環境、食べないという選択肢がある幸せに感謝する、ということです。また人の手が加わると食“品”になってしまいますので、なるべく手の加わらない食“物”を摂るようこころがけます。いろんな意見も参考に、飲む水もいいものを飲むようにしています。

【動】については、息とも関係しているのですが、ヨガの山本正子先生にご指導いただいて、仙骨から脊椎、蝶形骨を意識するように教わっています。また、きたにし医院でも定期的にヨガ教室を開催していただいたりしていて、患者様に大変好評です。

【想】については、最近流行りのようになっていますが、私も数年前研修を受けたマインドフルネスは、心の持ち方にとてもよい影響があります。一挙手一投足、「いま、ここ」に心をむけて、あるがままを受け取ることで、どこかに修行にいかなくても、毎日の生活から、無駄な悩み・思考がとれていきます。

-先生の今後のビジョンを教えていただけますでしょうか。

今でも自然食レストラン、滞在型施設などはありますが、食事から病気の治療を提案できるような食堂などの経営・監修に関われたらと思っています。単に1回だけいいものを食べるだけのレストランでは継続性がありません。実生活に持ち帰って、食事改善が実践できるような形の場を提供できればと思います。実際にお声がけもいただいているので、少しでも力になれたらと思っています。

今の超高齢社会とともに激増する認知症は、耳鼻科と関連が深い疾患です。嗅覚障害はアルツハイマー病の初期症状といわれ、アロマテラピーでの予防効果も科学的証明がなされています。難聴は認知症のリスクファクターにもあり、高齢化とともにめまい・ふらつきの患者さんはとても多くなっています。当院では脳活バランサーという機器を導入し、高齢の方の認知症傾向出現の早期発見につとめています。またMCI認知症スクリーニング遺伝子検査も行っていて、認知症の予防、早期発見などを耳鼻科目線ですすめたいと思っています。

また滞在型施設も現在でも色々とありますが、私はインド伝統医学であるアーユルヴェーダともご縁をいただいているので、いろんなプランに関してお声をかけてもらっています。もっと自然と敵対せず、自然と動植物の境界がなくなるような世界を目指せるように…、ヒトだけでなくあまねく生物の健康長寿、地球・宇宙との一体化に寄与できるような施設などに関われたらと思います。なんか壮大な話すぎました…。

-貴重なお話をありがとうございました!
▲先生の医院の名刺は"赤"!徹底されています。
『赤い』ものと、阪神タイガース!

現在、チャクラ・オーラリーディングなどを学びにカレッジに通っています。あまりご興味がない方もおられる世界でしょうが。チャクラをご存知の方はお分かりかもしれませんが、私はどちらかというと現実・生活面を表す第1チャクラが弱いタイプですので、その象徴的な色である「赤」を身に着けるようにしています。乗っている車はもともと赤ですが、持ち物から着るものまで無理のない範囲で赤を選んでいますね。
「〇〇についてはだれにも負けない」というのが、私には「阪神タイガース愛については誰にも負けない」というコメントを期待されているように感じてしまいました…。年間指定を購入し応援に行ける日には甲子園に行きます。子供には選手の名前をつけ、阪神ファン教育をしています。今年(平成29年)も、ご縁をいただいた球団スタッフのご厚意で2月の沖縄キャンプからシーズンのスタートです。選手と一緒にビールかけをするのが目標ですね。

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