資格試験合格者インタビュー

医療は、「チーム力」-。これに尽きます。

プロフィール

伊藤 宏文先生【耳鼻科医】
医療法人社団徳照会 いとう耳鼻咽喉科院長 いとう耳鼻咽喉科HP

千葉県の国立大付属病院、市立病院での勤務経験を活かし、「大病院に行かずしても最高レベルの診療を受けることができる医院」、「入院しなくても出来る日帰り手術や点滴療法ができる医院」、「全て自分自身が最初から最後まで責任をもって診療する医院」を理念として、開業以来自らの出身地である船橋市で地域に根ざしたホームドクターとして長年診察に携わる。自身が大病を克服した貴重な経験を患者に伝えるべく耳鼻科領域の枠にとらわれない栄養面からも治療提案をし、自己治癒力の回復を促進させる漢方薬、サプリメントによる分子整合栄養療法、点滴療法など、各種統合医療も念頭においた治療を提供。患者にとって拠り所なる心強い存在となっている。

-『杏林アカデミー』を受講したきっかけを教えていただけますでしょうか。

週末になると必ず何かのセミナーに参加して、『あれいいかも』『これもいいかも』と色々な分野に手を出す、いわゆる“セミナーオタク”でした。どのセミナーも勉強にはなりましたが、自分で実践してみると、「この方法で本当に健康が取り戻せる!」、「これからもずーっと健康で過ごすことができる!」という“確信”みたいなものを得ることができずにいたのです。

そんなある時、勉強会で知り合った先生に、“杏林アカデミー”を勧められました。正直、はじめはどんなことを勉強するのかさえ分からないまま、勧められるがまま…とりあえずの思いで受講したのです。

初めて参加した日、私は前の方の席に座っていたのですが、目の前で山田先生の情熱と気迫あふれる講義を聴いて、相当な衝撃を受けました。そして、今まで自分が学んできたものは一体なんだったのだろう…これは本物だ!と感じました。

-講義の中で特に印象に残ったことはありましたか?

一番印象的だったのは、トランス脂肪酸についてお話をされた時のことです。トランス脂肪酸の害について学んだだけでも大変な衝撃だったのですが、講義の最後で先生が「悪いとわかっていても誰も変えようとしない。誰も行動を起こさない。知っていて行動を起こさないのが一番悪い!行動を起こさないのであれば、悪い事に手を貸しているのと同じだ!!」と、すごい剣幕で迫ってきたのです。前の席に座っていた私ははっきり言って怖かったです。

トランス脂肪酸が体に悪いということは知っていましたし、人から聞かれれば害のあるものだと説明もしてはいましたが、当時の私は、自ら積極的に、真剣にだれかに真実を伝えようとはしていなかったのです。ですから、たくさんの受講生がその場にいましたが、自分が怒られていると感じました。

誰かを本気で変えようとすることは、それはそれは大変なことで、出来ない事の方が多いと思います。それでも伝えていかなければいけない真実もあるのだなと思わされ、「人は変えられない」という固定概念にとらわれていた、今までの在り方を反省しました。はっきり言ってこんなに真剣に、情熱を持ってお話される先生を見たことはありません。

-そうだったのですね。先生は耳鼻科のご専門でいらっしゃいますが、食事や栄養療法に興味をもたれるようになった“きっかけ”はあったのでしょうか。

学生の頃はラグビーをしていたという事もあり、食欲は昔から旺盛な方でした。しかし、医者になってからは、仕事最優先の生活で運動不足になってしまい…。帰宅して夕食を摂るのは午前0時過ぎが当たり前、ストレスがあると食欲に走ってしまう方なので、更に悪循環になってしまい、あっという間に太ってしまったのです。

遅寝遅起き、暴飲暴食、運動無し、ストレスいっぱいの生活が災いしてか、40代になって大病を患いました。自業自得なのは承知していたのですが、何とか健康な体を取り戻して、また元の生活に戻りたいと、その時心から思いました。

-病気になってから、健康の大切さをご認識されたのですね。

薬物療法や手術療法を中心とした、いわゆる西洋医学中心の治療をうけて、なんとか仕事に復帰する事が出来ました。でも「また再発してしまうのではないか…」という不安は無くならず、術後に高濃度ビタミンC点滴療法を受けたり、キレーション療法を受けたり、メラトニンやナルトレキソンを試してみたり、ゲルソン療法を試してみたり…根本的に病気を治すにはどうしたらいいのか、模索しました。そしてたどり着いたのが“栄養学”だったのです。

栄養学に関しては、医学生の頃から、きちんと系統だてて勉強したことがなかったので、分子整合栄養医学などをはじめて学んだときは、カルチャーショックでしたし、自分が普段行っている西洋医学以外に、こんなにも沢山素晴らしい医療があるということに驚きました。

ちょうど同じ時期に、大親友のドクターががんを患っていました。彼にも私が試した治療法を「やったほうがいいよ!」と勧めたのですが、当時の私には彼を説得しきる力がなくて…彼は手術療法や抗がん剤療法、放射線療法といった西洋医学中心の治療を受けていたのですが、残念な結果となってしまいました。とても悲しかったです。

結果的に私は生き延びて、彼は逝ってしまったのですが、自分にもっと確固たる信念と知識があれば彼を説得して、助けることが出来たのかなと思うことが今でもあります。これは今だから言える結果論ですので、もともとそのようになる運命だったのかもしれませんし、もしかすると逆の立場だったかもしれません。

-お辛い経験をされたのですね。先生はご自分の患者様にも食事や生活習慣について、アドバイスをされていると伺いました。

私は耳鼻科ですので、患者様の方から食事や生活習慣の指導をして欲しいと希望されることは少ないのですが、毎日たくさんの方を診ていますと、通常の治療では病気の治りが悪かったり、良くなってもすぐに再発してしまったり…。

病気の原因が耳鼻領域以外にあるのではと思う患者様がいらっしゃいます。こういった方には食事や生活習慣について、いろいろお話を聞かせていただいています。

-その中で印象的なことはありますか?

患者様の全体像が把握できてくると、病気の原因が生活習慣の乱れであったり、食事内容に問題があると気づくことがあります。食事が極端に偏っている人や、体に良いと信じて実践している健康法が間違っている方は意外と多いのです。

例えば、パン食が中心で牛乳・ヨーグルトなどの乳製品を健康の為にと積極的に摂っている方は、どれだけ治療をしても花粉症などのアレルギーがなかなか良くならず、むしろ悪化してしまうことがあります。そこで、小麦や牛乳は体に合わない方が多いことや、マーガリンは体に良くないことなどをお話するのですが、驚かれる方がほとんどです。もっと詳しく知りたいと、医院の貸し出し図書を積極的に読んでくれる患者様もおりますが、そのまま二度と受診してくれない患者様もいらっしゃいます。真実を伝えていくことは本当に難しいですね。

↑先生には杏林アカデミーで、耳鼻領域でのマグネシウムの
治療実績について報告いただきました
-診察の中で、杏林アカデミーで学んだ知識で特に役に立ったと思われたものはありますか?

全てのことが役立っておりますが、私は耳鼻科ですので、杏林アカデミーで教えていただいた耳鼻領域での療法(マグネシウムを用いた鼻うがいやBスポット療法)については積極的に関わることができる分野だと思っています。

鼻うがいは私が耳鼻科に入局した30年以上も前から行われていた治療法なのですが、濃度調整と手技さえマスターしてしまえば、誰でも簡単に安全に行えるのがいいですね。慢性副鼻腔炎の術後の患者様や花粉症の患者様、あまり薬を飲みたく無い方、妊婦さんなどにお勧めしております。他の耳鼻科医院で長い間治療していたけれども治らなかった患者様が、マグネシウム鼻うがいをおすすめしたら劇的に良くなったケースは沢山経験しました。

実はマグネシウムの鼻うがいは、私も実践していて、私の健康法の一つとして定着しています。

最初は食塩に比べて苦い感じがしましたが、慣れると刺激感が少なく、さっぱりとしていて…。今年の花粉症の時期は、症状もひどくならず、風邪をひく回数も少なかったですし、なにより洗浄後は頭がクリアになる感じが気に入っています。どんな健康法でもサプリメントでも、自分で体感してみて、よかったと思えるものを患者様にお勧めするようにしています。エビデンスも大切なのですが、実際に自分でやってみると、あまり効果を実感できないものもありますので…。

-先生のお墨付きの治療法であれば、患者様も安心されますね。

私の自慢の一つが、医院のスタッフ全員が鼻うがいを経験していることです。私以外は女性ですので、初めて鼻うがいにチャレンジするときは恐怖と抵抗感も大きかったと思いますが…。私が強引に鼻うがいsetを配布して体験してもらいました。評判は良好です。

-先生は杏林アカデミーもスタッフの方と一緒に参加されていたのが大変印象的でしたが、治療方針もスタッフの方と共有されているのですね。

以前はひとりで参加して、学んだことを自分なりの解釈を加えたり、医院に合った方法にアレンジして、スタッフに説明をして…というスタイルが多かったのですが、説明してもうまく伝えられなかったり、私の理解が違っていたりすることも多かったのです。学んだことを人に伝えることができて初めて、本当に理解したといえると思っているのですが、人に伝えるということは本当に難しい…。そんなこともあって、スタッフと一緒に参加できるセミナーについては、極力一緒に参加してもらうようにしております。なにより、学んだことを、すぐに行動に移せるのがいいですね。うまくいかなかったとしても、何がだめだったのか意見交換し、修正することができます。

また、スタッフが外に出ることで、他の医院の先生の取り組みや、自院よりも優れている診療、知識、情報に触れ、刺激をもらえるのでモチベーションアップにつながってくると思います。

何かをしようとする時、自分ひとりの力ではうまくいかなかったり、どうしようもないこともありますが、こうしてスタッフと一緒に取り組むことによって、実現する可能性がうんと高くなるのです。医療は、“チーム力”。これに尽きます。

患者様を治すことも大切なのですが、最近は仕事を通じてスタッフがどのように成長してほしいか、私自身がスタッフに対して何をしてあげることができるのか、どのような医院を作っていきたいのかを考えることの方が大切だと考えています。スタッフと一緒に成長することができれば、自然と患者様に対しても、よりよい医療を提供できるのです。

-医療を受ける立場としては、本当に頼もしいかぎり!素晴らしいお考えですね。

スタッフには「自分がしてもらいたいと思う事、自分の家族や大切な人に対してしてあげたいと思う事を、同じように患者様に対してもしてあげてください。」といつも話しております。

最近は学んだことを、どうしたら患者様にわかりやすく伝えることができるかに腐心することが多いです。色々な説明パンフレットを作って患者様に配布したり、動画を作ったり、患者様向けの院内セミナーを開催したりしております。まだまだ課題は多いですが、まずは発信していくことが大切だと思います。発信しなければどんなにいいものを持っていても宝の持ち腐れですから。

患者様の中には健康に関する知識をたくさん持っていらっしゃる方がおられますが、“知識”は“実践”しないと意味がありません。“実践”して初めて結果が出てくるのですから。そして私の仕事は、自分が得た情報の中から、正しいものを患者様に伝えるだけでなく、患者様が生活の中で“実践”できるものを優先的に“提案”することだと思っています。

-最後に先生の今後のビジョンを教えていただけますでしょうか。

細胞環境デザイン学を学んで、今までの自分にはなかった、一本の筋のようなものが出来たと実感しております。これからの診療で目指すべき方向が定まりました。
また、杏林アカデミーに参加して感動するのが、毎回、学習する内容が進化し続けているという事です。医療も日々進歩しておりますので、現在の知識に安住することなく、常に学び続けて、ベストな医療を患者様に提供出来るようにしていきたいと思います。この素晴らしい細胞環境デザイン学を少しでも多くの患者様に広めていきたいと考え、稚拙ながら院内セミナーなどを行っております。耳鼻科医として具体的に何が出来るかを日々考えて、診療し行動していきたいと思います。

-貴重なお話をありがとうございました!
-この“仕事”こそが私のこだわり-

この質問をいただいて、「何が自分のこだわりなのだろうか?」と考えていました。こだわりはあるようで、ないような…。趣味といえることでしたら、油絵、バイク、大物釣り、料理、ペン字、山登り、グルメ、マラソン、速読、旅行、筋トレ、水泳、神社仏閣巡り、自転車などなど今までいろいろなことにチャレンジしてきました。やり始めると熱中してしまう方です。でも、他の人よりも極めたい!という思いが、ストレスになってしまう―。ということを繰り返してきました。

長くなってしまいましたが、今の私のこだわりは?と考えてみると、“仕事”ではないかと思います。私にとって“仕事”にこだわるというのは、自分に常に妥協をせず、やり遂げ、いい結果を導くことです。自分の“美学”ではないですが、結果を得るためには、小さな失敗や、過去の成功体験などには縛られず、毎日淡々と、ひたすら取り組まないと実現しないと思っています。

いくつになっても自分を見直して、本当に良いもの、新しいものを学び、取り入れ、行動に移す…。世の中の流れやニーズに沿って“変化”していく姿勢が大切だと思っています。体を壊さない程度に、周囲の人にも喜ばれるように、自分が納得し、自分が喜びを感じられるように、これからも“仕事”に取り組んでいきたいと思います。

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