資格試験合格者インタビュー

最も大切なのは「何のために健康であるべきなのか」ということだと僕は考えています。

プロフィール

西塔治先生【歯科医師】
ならまちワンネス歯科院長(奈良県奈良市) ならまちワンネス歯科HP

昭和37年 大阪市生まれ。昭和61年大阪大学歯学部卒業。平成2年同大学院卒業。歯学博士。大阪大学歯学部付属病院勤務ののち、広島市にて一般開業医に勤務。平成7年大阪市にて西塔歯科医院開業、平成11年奈良市に移転。平成20年ならまちワンネス歯科として移転開業。3人のお子様は皆、中学に行かず自給自足の生活を福井にて学ぶ。奥様は陰陽料理・マクロビオティック・薬膳を勉強されている。ご家族の体のケアには、台所にある調味料や食材を使って治療を行う“手当法”を基本としている。

-早速ですが、『杏林アカデミー』を受講したきっかけを教えていただけますでしょうか。

知人に強く勧められたのがきっかけでした。「とにかく杏林アカデミーは他のセミナーとはレベルが全然違うから!」と。
栄養学に関することでいうと、僕自身、分子整合栄養医学という言葉も知ってはいました。だけど血液検査をして、どういうサプリメントの処方をして…という、非常に無機的なものだと僕には映っていて、自分の求めるものではないように思っていました。一方で、栄養学については、学ぶ必要性を何となくですが感じていたのです。でも、どこに踏み込んでいっていいのか分からずにいました。

-実際に杏林アカデミーを受講された印象はいかがでしたでしょうか。

杏林アカデミーは受講前に、ファスティングをしてレポートの提出が義務づけられていますよね。ファスティングを体験してから、中級講座→上級講座と受講していく中で、「杏林アカデミーで学ぶ“細胞環境デザイン学”は単なる栄養学という言葉では括ることができない!」と感じることができました。体験をし、座学へとコマを進めたことで、骨子がすっと入ってきたんです。

我々はとかく臓器や組織単位で患者さんを診がちですが、「もっとミクロに焦点をあて、ひとつひとつの細胞が健全に機能するように、細胞の環境を整えるのが治療の本質だ」という発想は革新的だと思いました。がんも最初は健常細胞だったものが、生きていくために、自らを悪い環境に適応させようとした結果、がん化してしまったものですからね。

杏林アカデミーを受講したことによって、健康を考える時に自分の中での心柱ができたと思います。今は患者さんに対しても自信をもって、食事や生活習慣についてお話することができます。それに、自分ができたことから、僕自身が手本となり家族やスタッフの意識を変えていくことが出来ると思いました。知り合いの歯科医たちの中でも杏林アカデミーを受講される方が少なからず出てきましたよ。

-それはとても嬉しいお言葉です。その他に変化はありましたでしょうか。

変化とは少し違うかもしれませんが・・・
杏林アカデミーの認定医試験のためにプレゼンテーションを整えたことは、本当に自分のためになりました。

もともと僕は一夜漬けしかできない人間で、計画的に準備をするなんて無縁だったのですが、認定試験に関しては様子が違いました。9月に試験があるのに、8月初旬から早々と準備を始め、テキストを何度も読み直し、関連する基礎医学も見直し、パワーポイントを作り、プレゼンの中で使う動画まで作り始めたんです。おおよその流れが完成したら、スタッフや家内に聞いてもらって、何度も何度も予行演習をしました。テキストは「これ以上はもうイヤだ!」というレベルまで復習しました(笑)

認定試験の準備は確かに大変で歯科医師国家試験以来のハードな勉強だったけど、その途中で細胞というミクロコスモスとそれを取り巻くマクロコスモスの関係性がストンと腹に落ちました。細胞環境デザイン学というのが全身でわかった感じで、僕の血肉となりました。今は患者さんを診るときに、心と体の全体と局所という視点だけでなく、細胞レベルという視点も増えたように思います。この試験を受けずに、単にテキストや本を読んでいるだけではこうはならなかったでしょう。情報は他人にアウトプットしてナンボ、そのためには腹に落とし込まないといけないと改めて感じました。

-先生の認定医試験の際のプレゼンテーションは大変印象的でした!

僕のプレゼンテーションのテーマは『わたしの子どもたちへ~細胞環境デザイン学と地球の未来~』で、小さな子どもを持つ母親を対象にしていました。この、『わたしの子どもたちへ』というのは、僕が書いた『シャングリラからの伝言』という本の中で登場するいじめに関する詩があって、そのタイトルからとったものです。

発表の内容は?といいますと、自然な“ストレス”が重要で、その解決策として里山づくりはどうかというものでした。そして最後に“萌叡塾(ほうえいじゅく)”の紹介と、“萌叡塾”でのうちの子どもたちの様子をまとめた動画を流しました。萌叡塾で自給自足をしていた子どもが自分で作った野菜を自宅に送ってくれたこともありますよ。立派な野菜を作るまでになったんだと感動しました。

※萌叡塾…福井県にある自給自足を営んでいるコミュニティー。西塔先生のお子さんは皆、自分たちの意思で中学校には通学せず、この施設で自給自足の生活をされていました。

また、この写真は12歳の時に息子が基礎から全て一人で建てたヤギ小屋です。ヤギを飼いたいのが目的で、ヤギ小屋を建てるのはその為の手段という・・・。大人には無い柔軟な発想ですよね。子どもの持つ可能性にはいつも驚かされます。

また、その動画のバックで流したのが、高石ともやとザ・ナターシャーセブンの『私の子どもたちへ』という歌だったのですが、何も意識したわけではないにも関わらず、発表タイトルと最後の歌のタイトルが一致していたのに後から気づき、自分でも驚きました。 「これこそ僕が一番伝えたかったことだったんだな」と。
動画で使った子どもたちの写真も、「きっとこの動画のこの部分で使われるために最初から撮られていたんだろうな」と思ってしまいました。

現在はプレゼンの資料をアレンジしてムービーを作り、子どもの口腔育成に興味がある親御さんたちに見てもらったりしていますよ!これは非常に説得力があるようです。

-先生の子どもさんに対する熱い思いが、ぎゅっと詰まったプレゼンだったのですね。

はい。プレゼンの準備をしながら、色々な縁を感じることができました。
そして、縁といえば、ちょうど認定試験の前日は、奈良県歯科医師会学術委員会主催のセミナーに山田先生をお招きしたのですが、不思議なことにそのときの先生の演題と、僕のプレゼンの内容がまったく同じだったのです。会場に来るまで先生の演題を知らなかったので本当に驚きました。

山田先生の講義を最初の10分くらい聴いただけで、胸が熱くなりました。聴衆がどう感じたか、役員がどう思ったかなど僕にとってはどうでもよく、僕が、子どもたちやその親へのメッセージとして伝えたかったことや、自分が本流だと信じてやってきたことは間違いではなかった!と確信し、喜びでいっぱいになりました。

-“子どもが病む社会に明るい未来はない”
山田所長も現代の子どもたちの状態について、警鐘を鳴らしています。

歯科医の視点でいいますと、ひと昔前に比べて子どもたちの虫歯はすごく減りました。ただ、“虫歯の洪水”と言われていた時代と比べると、現代の子どもたちが口にしているもののほうが明らかに悪いはずです。「虫歯が減ったのはフッ素入りの歯磨き剤を皆が使うようになったからだ!」という意見もありますが僕は賛成しかねます。

そもそも虫歯に限らず、“病気”というのは、「間違ったことをしているから、正しなさいね」という体からのサインでありメッセージです。子どもを取り巻く環境は明らかに悪化しているのに、虫歯が減っているというのは、体がサインすら出せなくなっている、もしくは虫歯以外の別の形で異常を起こしていると考えられますね。
例えば“落ち着きがない”とか“意欲的じゃない”という子どもの精神問題や、“ロコモティブシンドローム”といった身体問題を挙げることができるでしょう。心も乱れている上に、身体能力も著しく低下しているのです。こういったことは20年以上前から指摘はされていましたが、最近特に顕著になってきたように思います。

-現代の子どもたちの健康状態は危機的な状況にあるのですね。

そうなんです。そもそも子どもの発育の過程をみてみると、赤ちゃんが生まれてから“呼吸”をし、その次にするのが、お乳を吸う“吸啜(きゅうてつ)”です。これは赤ちゃんにとって最初の自発的行為です。この“吸啜”を経て、頭から首回りの筋肉や骨格が育ち、首がすわり、二足歩行へと発達していきます。この発達の流れを見てみると、首から下へという方向で進んでいるのがわかります。

つまり口の健全な成長発育が、頭・首そして脳の発達を促し、最終的に全身の発育を導くのです。現代の子どもたちの心や体に異変が起きているのであれば、発達のスタートである口の発育に問題があると考えられるのです。

-口が担う役割は非常に大きいのですね。

口の中、あるいは口の周囲に適切な負荷をかけてあげることにより、全身の発育を促そうという“口腔育成”と呼ばれる概念があります。僕はこの“口腔育成”を念頭に置き、診療を行います。赤ちゃんのときにしっかり泣かせてあげること、吸綴も姿勢も口腔育成の視点からはとても重要であるのです。

口腔育成は健やかでたくましい子どもを育てるもの。虫歯や歯並び、口呼吸や嚥下障害はすべて枝葉の問題に過ぎないと考えています。

-口の発達が全身の健康につながるー。命の始まりは口と言っても過言ではありませんね。

そうですね。また、認定試験のプレゼンの中でも強調したことなのですが、今の子どもたちは本来負荷されるべきストレスがまったくと言っていいほどかかっていないように思います。

今一般的に言われるようなストレッサー(ストレスを引き起こす物理的・精神的要因)の中から、社会の近代化とともに出現したものを除いていけば、最終的には“空腹”と“寒冷刺激”という2つのストッレサーだけが残ります。太古の時代から、人間はこれらのストレッサーの中で生き延びてきたわけで、当時は今のような慢性病はなかったことを思うと、この2つのストレッサーは人が健康で生きるために必要不可欠な負荷であると断言できるのです。

長女は18歳になった時に“萌叡塾”の近くに古民家を借りて自給自足の生活を始めたのですが、その家は隙間風なんて普通、加えて電気・ガス・水道もない。あるのはランプひとつだけ。僕が泊まりに行ったときは、そのランプを熱源としていて、「これが結構あったかいねん、お父さん」と意味不明なことを言われました。
ランプを抱きかかえりゃ、そりゃ多少は暖かいだろうが、そんなことしたら真っ暗になるような生活。現代では考えられないですよね?床の雑巾掛けを半日くらいかけてした後、その跡を見たら全部凍っていて「半日もなにやってたんやろ?」と思った、といったエピソードも話してくれました。でも長女は、風邪なんかひかないし健康そのものです。

また、食べ過ぎるとロクなことにならないというのは、ノーベル賞をとったオートファージの研究でも示されています。
ですので、お母さん方には“空腹”と“寒冷刺激”という、大切な2つのストレッサーを子どもに与えるようにお願いしたいですね。

お腹が空かない限り食べ物を与えない、時には空腹を我慢させる、お腹がペコペコになるような生活をする、過剰にエアコンを使わない、寒冷浴をさせる・・・

過保護とは色々な解釈の仕方がありますが、この二つのストレッサーを与える子育てをすれば過保護にはなりようがないと思えます。過保護は子どもの体をダメにするのです。このことをよく理解して欲しいと思います。それも無理なら、「子どもを逞しく育てるのは諦めなさい!」と声を大にして訴えたいです。

-子どもさんに限らず大人の患者様も含めて、診療の時に先生が大切にされていることを教えてください。

僕は患者さんに対しては、「世の中に“健康に良い”なんてものはない。“健康を害する”ものがあるだけで、いかにそれらを遠ざけるかが重要だ」ということをお伝えしています。人は元来、完璧に作られています。心身と環境の調和がとれないからバランスを崩し、不健康になってしまうのです。

皆さん何かを体に入れると健康になると思って、安易に何かを摂り入れようとするのですが、それよりも、「悪いものを“入れない”、悪いものを“出す”」ということの方が大切なのです。

多くの患者さんが「甘いものがやめられない」「アルコールがやめられない」とおっしゃるのですが、やめられないこと自体が問題なのではなく、なぜそれに依存をしているのかということを突き止めることの方が重要です。真の問題点をきちんと認識して改善していかないと、人は変化しませんね。お酒が好きな僕が言うのもなんですが(笑)

-笑。まずは、何かに依存している自分の存在を認めることから始まるのですね。

はい。さらに言うと、最も大切なのは「何のために健康であるべきなのか」ということだと僕は考えています。

ほとんどの人は「病気になりなくないから」とか「長生きをしたいから」とおっしゃるのですが、「じゃあなぜ長生きしたいの?長生きして何するの?」という話になりますね。それは僕は違うと思っています。

何のために健康であるべきか…

その答えは「人として生まれてきて成すべきことがあって、そのためには健康であることが望ましいから」。
これこそが“健康”が大切な理由だと僕は考えています。それを患者さんに理解していただきたいと思うのですが、なかなか難しいことが多いです。歯科医にそんなことを言われるなんて考えもしないでしょうから(笑)

人は何のために生まれてきたのか
“幸せ”とは何か

この2つを僕はいつも考えています。

-“幸せ”とはなにか・・・。先生の考える“幸せ”について教えてください。

“幸せ”とは「自分が生まれてきた目的に沿った道に、今、自分がいると確信すること。それを支えてくれる多くのエネルギーの存在を実感すること」であって、この時の満たされた感覚を“幸福感”ということもあります。だから“幸せ”という言葉の定義は人によって違うなどということはあり得ないと僕は考えていますので、“僕の考える幸せ”というものは存在しないのです。

あなたにとっての幸せとはなに?

など、一般的にはよく言われますし、本屋さんに行けば、幸せについて書かれた本がそれこそ山のようにあります。

でも“幸せとは何か”について定義している本はないのですよ。これっておかしいですよね。だって、何が幸せかという理解なく、仮に幸せな状態であったとしても、自覚なんてできるはずもないのですから。結局は永遠に幸せにはならないのです。

▲ 先生の御著書「シャングリラからの伝言」
-先生のご著書『シャングリラからの伝言』でも幸せについて触れられていました。

そうですね、『シャングリラからの伝言』の根幹となるメッセージです。

人は何のために生まれてきたのか

インドのある聖者は「人生に意味などない。ものごとに意味付けをするのは“マインド”(既製概念)の仕業で、人は自分で意味付けしたものを体験して苦しんでいるのだ。ものごとに一切価値判断せず、ただそれを体験するのが人生である」と述べています。

一方で、一般的な自己啓発セミナーなどでは「自分の望むように、ものごとを意味付けすれば人生が変わる」などと教えます。どちらもある一面では正しく、別の一面では正しくないと、僕は考えています。

人が生まれてきた目的は、あらゆることを体験し、それに伴う感情を楽しむことです。そして言動を通して、“人生”という白いキャンバスに自分しか描けない絵を自由に描いていく-。そうしていくうちに、さも偶然に見える人との出会いや出来事を、宇宙はめぐりあわせてくれるのです。セレンディピティですね。これを“偶然”ではないと気づき、感謝をしていくと、ますます宇宙は手助けをしてくれます。それを実感することも幸せの重要な要素ですね。

-ありがとうございます。最後になりますが、先生の今後のビジョンを聞かせてください。

当院の究極の目的は医院名のとおり“ワンネス”の実現です。
“ワンネス”とは個性の違うもの同士がお互いに認め合い調和している状態のことです。そこでは“白”は“白”として在り、“黒”は“黒”として在るけれど、溶け合って“グレー”にもなる-。つまり「“個”としてもその存在は輝くし、他と溶け合うことで新しいものを創り出す」ということです。

僕は、まさに“ワンネス”な社会・世界を実現したいと考えています。
そのためには、まずは個人が幸せであること、その次に家族が幸せであること-。健やかでたくましい子どもは、大人になっても健康的に年を重ねていくことができるでしょう。するとその子たちは自然に幸せな家庭を築くようになるのではないでしょうか。

先にも述べたように、人間は“口”から発達します。口の健康を守るのは歯科医です。ですので僕は食育や口腔育成を通じて、個人の幸せに寄与したいですね。今あるような予防歯科、つまりは虫歯予防や歯周病予防などは、細菌に侵されない様なからだづくりや慢性炎症を起こさないようなからだづくり、といった方法にシフトしていくでしょう。

いずれにせよ、僕たちは子どもたちの未来を最重要事項として考えねばならず、そのためにはどう考えても豊かな“自然環境”と、人としての正しい“教育”が必要なのです。

自然環境に関しては他の方に譲るとして、子どもの正しい教育のためには、高い意識と純粋な意図を持ち、叡智と繋がることのできる大人が必要です。今後なにかしらのかたちでそういったことに関わっていくのかもしれませんが・・・
すべては宇宙の導きにお任せしていますね。シンクロニシティとセレンディピティを意識しながら、行くべき道を間違えないようにしたいものです。

―貴重なお話をありがとうございました!
「常に客観的に自分を見つめる」

僕は“こだわり”という言葉があまり好きではないので、“普段気をつけていること”をお話しします。

一番大切なことは自分自身の位置を知ることで、そのためには常に客観的に自分を見つめる必要があります。
スタッフや患者さんとのやり取りの中で、「なぜ僕はこういう感情を抱くのだろう?」とか「なぜさっきはあんな言い方をしてしまったのだろう?」と考えるということです。そうすると、自分のその時の状態や意識がそれを引き寄せていることに気づきます。
だからなるべく好ましいことが起こるように、これは自分だけでなく周囲の人にとってもということですが、そういう意識でいるように心がけています。
高い意識で、純粋な意図で、相手の中の真実の部分に光を当てるように。
こんなこと言っているから変わっていると思われるのでしょうね(笑)

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